デッサンの壺- -デッサン あれやこれや-- デッサン質問箱 応用技法編 知識編

形が取れていない要因と改善策を教えてください?

デッサンQ&A吹き出し用画像男性3
ヤマダさん

形が取れていない要因と改善策を教えてください?

デッサンQ&A吹き出し用画像師匠
センセイ

●短い線をつないで描いている場合●

絵を描いているとき、自分が描いている部分しか見ていないと思われます。

線が短い(ストロークが短い)と、視点も小さく動きがちです。
少しずつ描いていって、仕上がってから初めて全体を見たら形が狂っていたということが多いのではないでしょうか。
形を取るということは、全体を見渡しながら描くことです。
まず、自分の見ている範囲を広げるようにしましょう。

有効な方法としては、イーゼルなどを使い、紙と顔との距離を保つこと、少しずつスピードを上げて、長い線で描くことが挙げられます。

特にストロークは、最初にアタリ(薄く簡単に形を取ること)をつける時には、できるだけ大きく長く取ります。細かく描く前に、全体的にぱぱっと大きく形を取るように気をつけましょう。

●線を何重にも重ねて描いている場合●

デッサンで同じ部分に何度も線を重ねて描いていると、どれが本当に正しい線なのか、自分でも分からなくなってしまいます。
その結果、いつまでも形が定まらず、線ばかりが太く濃くなり、細かなディテールは潰れ、全体としてぼんやりとした不確かな形になっていきます。

もちろん、「最終的に一本の線を清書するために、あえて薄いアタリ線をたくさん描いておく」という方法もあります。
しかし、そうした意図がなく、単に自信のなさから同じ線を何度もなぞっているだけなのであれば、その癖は直した方が良いでしょう。
まずは、無駄な線の本数を意識的に減らし、一本一本に集中して、気合を入れて線を引く練習をしてみてください。

まるで、一本一本が本番の清書であるかのような気持ちで、線を引いてみるのです。
この練習を繰り返すと、特に漫画やイラストの線画(ペン入れ)などを目指す方にとっては、線そのものが洗練され、プロらしい印象になっていきます。

デッサンにおいても、常に適度な緊張感を持ち、一本の線で形を決めていく、と心がけるのが良いでしょう。

●大体合っているが、何か違和感がある場合●

デッサンの枚数を重ね、かなり上達してきた中級以上の方から、「自分の絵が、なぜか少し歪んで見えるのだが、原因がよく分からない」という相談を受けることがあります。
この場合、主に二つの可能性が考えられます。

一つ目の可能性は、あなたの「見る目」が、あなたの描く技術以上に上達し、自分に対して厳しすぎることです。
デッサンの経験を積んだことで目が肥え、ほんの僅かな歪みも気になるようになったのでしょう。
アタリやクロッキーの段階での多少の歪みは、気にする必要はありません。
最終的な仕上げの段階で修正できるのであれば、全く問題ないのです。

もう一つの可能性は、自分では気づきにくい、描き方の「癖」です
例えば、右利きの人は、瓶のような左右対称のものを描くと、無意識に右側だけが歪んでしまう、といった傾向があります。
あるいは、何度描いてもパースを少しきつく取りすぎてしまう、という癖が抜けない人もいます。
人間である以上、誰にでも何かしらの癖はあるものです。

こうした癖は、自分一人ではなかなか気づけないものです。
ぜひ一度、周りの人や先生に自分のデッサンを見てもらい、客観的な意見を求めてみましょう。
自分の癖を自覚できれば、そこを意識して描くだけで、歪みは大きく改善されます。

そして、その癖は必ずしも「欠点」ではありません。
うまく使いこなすことができれば、それは誰にも真似できない、あなただけの「個性」や「味」にもなり得るのです。
欠点と捉えずに、自分の表現の一部として、前向きに付き合っていってください。

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デッサンでよくある質問をまとめたコーナーです。独学派の方も、学校で勉強している方も、ぜひ参考にしてください。


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