デッサンの壺- -デッサン あれやこれや-- デッサン質問箱 知識編

『絵心がある』とはどういうことでしょうか。

デッサンQ&A吹き出し用画像男子高校生
スズキくん

「絵心がある」とはどういうことでしょうか?

デッサンQ&A吹き出し用画像師匠
センセイ

「絵心」や「センス」といった言葉は、とても曖昧で、明確に定義するのが難しい言葉です。
この「絵心」というものを説明するのに、写真が分かりやすい例えになります。

写真は、誰でもシャッターを押せば撮ることができます。
それならば、同じ場所で同じものを撮れば、誰が撮っても同じ写真になりそうですが、不思議なことに、100人いれば100通りの全く違う写真が出来上がります。
絞りやシャッター速度、アングルやトリミングなど、無数の選択肢があるからです。

では、その中に「絵心がある」と感じる写真はどれくらいあるでしょうか。
おそらく、撮った人が何かを明確に「意識」している写真が、それに当たるはずです。

撮りたいもの、伝えたいメッセージ、作り出したい雰囲気などが、強く表現されている写真。
それは、ただ何となく対象を真ん中に置いてシャッターを切ったのではなく、はっきりとした「目標」に向かって、絞りやシャッター速度などを設定し、撮影された一枚です。

この「目標」とは、撮る人の頭の中にある「出来上がりのイメージ」のことです。
例えば、「幻想的な雰囲気にしたい」「この光の美しさを表現したい」「対象の形の面白さを切り取りたい」など、様々です。
その明確なイメージがあって、初めて「どうすればこのカメラでそれを実現できるか」という思考が始まります。
「たまたま撮れた一枚」とは、ここが決定的に違うのです。

常に「完成イメージ」が先にあること。
そして、それをゴールとして、全ての工程が存在すること。
この「明確なイメージを持つ力」こそが、「絵心」の正体だと考えてよいでしょう。

絵画は写真ほどスピーディーに完成しないため、ついこの最初のイメージを見失いがちです。
しかし、プロセスは同じです。
「こんな雰囲気にしたい」「このモチーフの、ここが面白い」といった、自分が描きたい完成イメージを常に持ち、そこに向かって線や色を重ねていく。
その意識こそが、「絵心のある絵」を生み出すのです。

トライトーン・アートラボ_デッサン教室デッサンQ&Aバナー

デッサンでよくある質問をまとめたコーナーです。独学派の方も、学校で勉強している方も、ぜひ参考にしてください。


-デッサンの壺- -デッサン あれやこれや--, デッサン質問箱, 知識編
-,

関連記事

鉛筆は長く削ったほうがよいのでしょうか?

スズキくん 鉛筆は長く削ったほうがよいのでしょうか? センセイ デッサンでは、鉛筆を寝かせて広い面を塗ることがよくあります。そのため、鉛筆の先端を削る際、芯の周りの木の部分を短く削りすぎると、その木材 …

鉛筆だけで様々な色味を出せるようになりたいのですが。

タカハシさん 鉛筆だけで様々な色味を出せるようになりたいのですが。 センセイ これからご紹介する方法は、鉛筆の表現技法を探るちょっとした研究ですが、とても面白い作業です。より楽しく、表現豊かな絵を描き …

仕上がりを見るといつも薄い印象を受けます。

スズキくん 仕上がりを見るといつも薄い印象を受けます・・ センセイ 「なんだか自分の絵は密度がなくて、迫力に欠けるな」と感じる場合、その原因は「色の薄さ」「描き込み不足」「タッチの粗さ」のいずれかにあ …

人体を描く時、手足が小さくなってしまうのはなぜですか?

ヤマダさん 人体を描く時、手足が小さくなってしまうのはなぜですか? センセイ 人間の脳は、他人を認識するとき、主にどこを見ているのでしょうか。手足の形ではなく、もちろん「顔」で個人を判断しています。つ …

色をモノクロにするのが難しいのですが。

サトウさん 色をモノクロにするのが難しいのですが。 センセイ カラーで見えている現実の風景を、鉛筆や木炭を使って、あえて白黒のモノクロ世界に置き換える。デッサンとは、そういう作業ですから、なかなかうま …

error: