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デッサンが狂っていても気にならない絵があるのは、なぜですか?

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サトウさん

デッサンが狂っていても気にならない絵があるのは、なぜですか?

デッサンQ&A吹き出し用画像師匠
センセイ

漫画やイラストの中には、強くデフォルメされていたり、作家の個性が際立っていたりして、一見するとデッサンとは無縁に見える絵柄があります。
そうした絵でデッサンが「狂っている」ように見えるのは、それが計算された意図的なものであったり、正確な形を捉えることよりも、特定の表現を優先した結果であったりします。

その上で、「デッサンが狂っていても気にならない絵」に共通する特徴を、二つほど挙げておきます。

一つ目は、全てのものが「立体物」として描かれていることです。

下絵の段階で、見えない部分も透かして描かれているため、服に隠れた手足がきちんと繋がっていたり、物体の裏側が自然に意識されていたりします。
初心者のうちは、線画を平面的な図形として考えてしまいがちですが、一定のレベルを超えた描き手は、必ず全てのものを立体として意識しながら描いています。

二つ目は、描き手が「ある程度以上の修練を積んでいる」跡が見えることです。

ここでの「修練」とは、ただ人の絵を真似てきた、という意味ではありません。
その人自身が、自分の作風や個性と、長い時間をかけて向き合ってきた跡が見える、ということです。
どんなに風変わりな絵でも、描き続ければ、それはやがて「個性」になります。
昨日の自分より少しでも上手くなろうと努力を10年も続ければ、それは他人が容易には到達できない、強固な個性となるのです。
そうした、膨大な数のスケッチや作品をこなしてきた跡は、完成した絵の中に必ず表れます。

「デッサンが狂っていても、良い作品はある」と言う方は多く、それは紛れもない事実です。
しかしながら、「自分のデッサンは、狂ったままで良い」と本気で思っている作家は、おそらくほとんどいません。

どんなに自由に見える作品の陰にも、必ず作家本人の血のにじむような努力と、長い試行錯誤の道のりがあることを、私たちは忘れてはならないと思います。

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デッサンでよくある質問をまとめたコーナーです。独学派の方も、学校で勉強している方も、ぜひ参考にしてください。


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