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絵が上手い人は、描けない人に比べて、何が「見えて」いるのでしょうか?

デッサンQ&A吹き出し用画像男子高校生
スズキくん

絵が上手い人は、描けない人に比べて、何が「見えて」いるのでしょうか?

デッサンQ&A吹き出し用画像師匠
センセイ

自分が見えているものは、上手い人が見ているものとは違うのでは?
そんな風に自分の目を疑ってしまうのは、悩んでいる方には失礼ですが、
非常に面白い現象だと思います。

私たちは、絶対に他人の見ているものと同じものを見ることができません。
だからこそ個性があり、ひとりひとりが違う絵を描くのです。
ですから自分が見ている映像が、他人と違うのか?と思うことは自然なことです。

パラドックスですが、この文章を描いている私も、
他人の目を通してモノを見たことがありませんので、
これから書くことは、あくまで仮定と思ってください。


絵を始めたときに見えていなかったものが、だんだん見えてくるのは
デッサンを継続して描いたことがある方には、経験のあることだと思います。
例えば、白い立方体などを描くと、初心者の方はあっという間に塗り終わり、
もう描くところはないような顔をすることがあります。

よく見ると、ただの白と思っていたところにも微妙な色の変化があり、
ただのグラデーションだと思っていたところにも、様々な諧調がある。
そこに気がつくと、今度は描くことが多すぎて時間がなくなります。
世の中には、描くべきものがたくさん溢れているような気がしてきて、
途方もなく広い海に漕ぎ出してしまったような気分になることもあります。


絵が上手い人は、この上記の2つをクリアしています。

ひとつは、初心者に比べて、圧倒的な情報量を目から脳に入れています。
もうひとつ、その中から描くべき情報を自分で選び取っています。

まず、見えるということが重要です。ここまでくるのは訓練です。
よく見て描けば、絵が上手い人と同じくらいの情報量は得られるようになります。

次に、ここが重要ですが、その中から、自分が描きたいと思うイメージに
一番近いと思う要素を、最低限拾って描きます。
最低限です。かなり情報を絞り込んでいると思います。
描けない方は、例えば目から入った100の情報(色、構造、質感、陰影、etc…)
の中から、必要なものが分からずに、片っ端から100個描こうとして失敗します。

この中で、たった10個の情報を選び出して描くことができる人は、
かなり絵の上手い方です。
(余談ですが、この情報の選び方が個性です)

まず、上手い人が見えているものは、上手く描けない人と同じかそれ以上です。
そして、何よりも、それを選び取る能力に長けている。
これが、絵が上手い人の脳の中で起こっている事実だと思います。

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デッサンでよくある質問をまとめたコーナーです。独学派の方も、学校で勉強している方も、ぜひ参考にしてください。


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