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どんな段階を踏んで、デッサン力が付くのでしょうか。

デッサンQ&A吹き出し用画像女性1
サトウさん

どんな段階を踏んで、デッサン力が付くのでしょうか?

デッサンQ&A吹き出し用画像師匠
センセイ

「デッサン力」という言葉は定義が曖昧ですので、ここで私なりに三つの段階(フェーズ)に分けて定義してみたいと思います。

第一の段階は、「頭で考えた通りに手が動く」状態です。
頭に思い描いたイメージや、目で見たものを、ほとんどストレスなく紙の上に再現できる力。
これはある種の運動神経のようなもので、とにかく練習量をこなすことで、ある程度までは誰でも身につけることができます。
人によっては、この段階で十分に「デッサン力がある」と言えるでしょう。

第二の段階は、「観察力が上がった」状態です。
デッサンを続けていくと、今までただの円柱だと思っていた缶の細かな凹凸や、人体が持つ特徴的なラインなど、これまで見えていなかったものが見えるようになってきます。
この段階に至ると、明らかに初心者とは違うレベルのデッサン力が身につき始めます。
また、優れた映画のカメラワークや、歴史的な名画の技術的な凄さなども読み取れるようになり、様々なものからインスピレーションを得て、新たな創造に繋げやすくなるでしょう。

そして最後の第三の段階が「得た情報が、頭の中で整理整頓されている」状態です。
ここまで来ると、物事の特徴を構造的に理解しているため、目の前に実物がなくても描けるようになります。
さらに、膨大な情報の中から、表現に必要なものだけを的確に選び取れるため、短い時間で、最も効果的な絵を描くことが可能になります。

その結果、特徴的な部分を強調したり、アレンジしたりして、オリジナルのメカニックデザインやキャラクターデザインなどを、より容易に生み出せるようになるのです。
頭の中で想像できる世界の解像度も、第一段階の頃とは比べ物にならず、自由度とディテールの細かさが飛躍的に向上します。

デッサン力は、おおよそこの三段階に分けられると私は考えています。
人によって、あるいは目的によって、どの段階までのデッサン力が必要かは異なります。
自分が今どの段階にいて、どこを目指しているのかを認識しながら練習することで、自身の成長をよりはっきりと感じ取れるようになるでしょう。

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デッサンでよくある質問をまとめたコーナーです。独学派の方も、学校で勉強している方も、ぜひ参考にしてください。


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